タイでは、亡くなった後は火葬され、その遺灰を自然に還す、つまり川や海へ散骨することが広く行われている。日本のように「お墓に納骨する」という考え方は必須ではない。
散骨がポピュラーだという話は以前から聞いていた。しかし、実際にその場に立ち会うのは今回が初めてだった。場所はチョンブリ。サタヒープ沖の海域、沖合およそ3キロほどの地点まで船で向かう。 タイ式の散骨には、いくつかの作法がある。
儀式の中で行われる読経。マリーゴールドなどの花とともに遺灰を海へ流し、水に溶ける容器を使って自然へと還していく。
昔の習わしでは、**「散骨が終わった後は、決して後ろを振り返ってはいけない」**とされていたそうだ。魂をこちらの世界へ呼び戻さないためである。こうした一つひとつの動作が、単なる形式ではなく、深い宗教的な意味を持つ大切な儀礼だった。
ひるがえって、現代は写真やビデオ撮影の時代。 もしかしたら今日の散骨の様子も、今ごろ誰かのインスタにアップされているかもしれない。
今回の散骨には、親戚一同およそ20名が集まった。日本人の感覚だと、喪服や黒系の服装を着るべきかと気を遣ってしまうところだが、実際には白を基調としたラフな服装の人が多い。船に乗るという事情もあるのだろうが、全体としてどこか穏やかで柔らかい雰囲気だった。亡くなってからすでに半年が経っていることもあり、いわゆる「しめやかさ」一色というわけではない。久しぶりに顔を合わせた親族同士が再会を喜び、船上では自然と会話が弾んでいく。 やがて船員による読経が始まり、空気が少しずつ引き締まる。静けさの中で、散骨が始まった。白い粉となった遺灰が海へと還っていく瞬間、ほんのわずかに胸が締めつけられるような感覚がある。けれど同時に、「自然へ帰る」というこの国の死生観を、少しだけ理解できた気がした。やすらかなる眠りを。
なお、今回の散骨では遺灰のすべてを海へ還したわけではない。一部のみを散骨し、残りは家族のもとで大切に保管される。このように、すべてを一度に手放すのではなく、時間をかけて向き合っていくのもまた、タイらしい供養の形なのかもしれない。
そしてシーフードレストランでランチ。散骨した海で採れたシーフード🦑🦐🦞
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